武井壮さんのツイートで考える技術練習の意味

こんにちは、トモヒトです。
今回は、技術練習の意味について考えていきます。
この内容で記事を書こうと思ったのは、下の武井壮さんのツイートを見たのがきっかけです。
スポーツやってる人はフォームとか気にしすぎやねん。。スポーツは力の内容が同じならいいんだから、まずはそこを観る。。そしてそれを再現しやすくするためだけに決まったフォームを作るだけ。でも決まったフォームには汎用性がないから上達に時間かかる。。結果のエネルギーを観察できる目が必要。。
— 武井壮 (@sosotakei) September 23, 2020
このツイートについて、自分なりの解釈を書いていきたいと思います。
ボールの行方を決めるのは・・・
まず、「スポーツは力の内容が同じならいいんだから」という部分ですが、そもそもボールの軌道はどのように決まるのかについて考えていきます。
『テクニカル・テニス ラケット、ストリング、ボール、コート、スピンとバウンドの科学』の中で「打ったボールの進路の作図方法」が紹介されているので、それをもとに考えていきます。
まずは、ボールの進路とスイング方向から、ラケットに対するボールの相対的な進路を求めます。
次に、入射角と反射角がほぼ等しいことから、インパクト後のボールの進路を求めます。
このとき、ボールの速度はインパクト前のボールの相対速度の約40%になることから、「ボールの相対的な進路」の矢印の0.4倍の長さで作図します。
ちなみに、「ラケット面のどこで当たるか」や「ボールの回転」によって、インパクト後の進路は次のような影響を受けます。
- ラケット面の先端付近で当たると、ボールの速度は落ちるため、「インパクト後の進路」の矢印は短くなる
- ラケット面に対して順回転(トップスピン)がかかっている場合は、ラケット面の垂線と「インパクト後の進路」の矢印の角度が大きくなる
- ラケット面に対して逆回転(バックスピン)がかかっている場合は、ラケット面の垂線と「インパクト後の進路」の矢印の角度が小さくなる
後半の2つを考えると、「強いトップスピンのかかったボールを返すときは、ボールが浮きやすい」「スライスをボレーで返すときは、ネットしやすい」というのは、物理的にも正しいといえそうですね。
最後に、インパクト後の進路とスイング方向を合成することで、打ったボールの進路を求めることができます。
これらのことから、打ったボールの進路に影響を与える要素についてまとめておきます。
- インパクト直前のボールの進行方向とスピード
- インパクト時のスイング方向とスイングスピード
- インパクト時のラケット面の向き
ここまで小難しく書いてきておいて、結論は「普通じゃないか」と言われそうなことを書いてしまいました。
ただ、ここでポイントなのが「打ったボールの進路に影響を与えるのは、インパクト時の要素だけ」ということです。
言い換えると、「インパクト後のフォロースルーやインパクト前のスイングを修正したとしても、インパクトの形が適切でなければ狙った方向へボールを飛ばすことはできない」ということです。
ラケットからボールが離れた後に、いくら手首を使ってラケットを振り上げたとしても、ボールには何の影響も与えないのです。
フォームを修正する意味
狙った方向へ打つには、適切なインパクトの形を作ることが重要であるということでした。
では、なぜ技術練習でフォームを修正する意味とは何でしょうか?
それは、「インパクトの前後の動きを修正することで、インパクトの形を適切な形に近づけようとしているから」です。
テニスでショットを打つ際のインパクトは、約0.005秒だとされています。
そのため、インパクトでラケットを意識的に操作してボールの軌道を変えるのは不可能です。
(脳が「ラケットにボールが当たった」と認識するときには、すでにボールはラケットから離れているから)
そこで、インパクトの前後の動き(フォワードスイングやフォロースルー)を修正することで、インパクトの形を修正しようとなるのです。
※これは、武井さんのツイートの「そしてそれを再現しやすくするためだけに決まったフォームを作るだけ。」という部分に通じるのかなと感じます。
フォームを固めずにボールをコントロールできるようになる方法
ただ、武井さんのツイートは、「でも決まったフォームには汎用性がないから上達に時間かかる」と続きます。
確かに、あるフォームは似たような状況であればある程度対応できるかもしれませんが、全く違う状況では別のフォームを引っ張り出さないといけなくなります。
つまり、対応する状況が多ければ多いほど、覚えるフォームの種類が増えるということです。
では、フォームを覚えずに、ボールを狙った方向へコントロールできるようになるにはどうすればいいでしょうか?
ここで、「打ったボールの進路は、インパクト時の要素によって決まる」という大前提に立ち返ってみます。
すると、ある仮説が思い浮かびました。
「インパクトでどの要素がどのように影響するのかを体感させれば、フォームを教えなくてもボールをコントロールできるようになるのではないか?」
例えば、面の向きとボールが飛ぶ方向の関係を教える場合は、次のような方法を取ります。
- ボールつきやミニラリーで面の向きを変えさせて、ボールが飛ぶ方向がどう変化するのかを体感させる
- 面の向きだけでボールを狙ったところに飛ばせるように、考えながら打ってもらう
ポイントとしては、教える要素以外はできるだけ一定にすることです。
ここで、指導者が「面をどうしたらボールがどう飛ぶか」を教えるのではなく、選手自身が体感から導き出すように見守ることが大切です。
スイング方向やインパクト直前のボールの進路も、この方法を工夫すればできなくないと思います。
この方法であれば、次の5つを理解すればよいことになります。
- 面の向きとボールが飛ぶ方向の関係
- スイング方向とボールが飛ぶ方向の関係
- スイングスピードとボールが飛ぶ方向の関係
- インパクト直前のボールの進路とボールが飛ぶ方向の関係
- インパクト直前のボールのスピードとボールが飛ぶ方向の関係
「スイング方向」と「スイングスピード」で分けたのは、同じスイング方向でもスイングスピードが違うと、ボールの飛ぶ方向が変化するからです。
具体的には、「スイングスピードがボールスピードに対して速ければ速いほど、ボールの飛ぶ方向はスイング方向に近づく」という事実があります。
インパクトでの要素と打ったボールの関係が理解できれば、ラリーなどでイメージしたボールと実際に打ったボールにズレが出たときに、「イメージよりも○○だった→だから△△をこう変えてみよう」と修正することができるようになります。
もちろん、ラケットの動きが大きくなると、タイミングなどの時間的な要素もさらに加わるので、ここまで単純ではありません。
とはいえ、インパクト時の要素がどう影響するのかを知ることは、フォームを覚えること以上に大切ではないかと感じました。
最後に
今回は、技術練習の意味について考えてきました。
最後に紹介した「インパクト時の要素と打ったボールの関係を教える方法」は、あくまでも机上の空論であることをご了承ください。
武井壮のツイートの真意は本人にしか分からないと思いますが、「型」を重んじる日本のスポーツ指導に一石を投じるものになったと思います。
今までの慣習にとらわれず、よりよい練習方法を追求していきたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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