スポーツ技術習得・運動学習のキーワード「アトラクター」と「フラクチュエーター」

2020/07/09
 
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小学校時代に硬式テニスを始め、大学ではスポーツ科学について学びました。 戦術的なテニスプレーヤーを育成して、おもしろいテニスをするプレーヤーを増やし、日本テニス界の更なる発展に少しでも貢献できればと考えています。

こんにちは、トモヒトです。

今回は、スポーツ技術習得・運動学習のキーワードである「アトラクター」と「フラクチュエーター」について書いていきます。

スポーツ動作の「アトラクター」と「フラクチュエーター」を把握することは、運動学習やトレーニングを組み立てる上でも重要だといえます。

「アトラクター」と「フラクチュエーター」とは?

まずは、「アトラクター」と「フラクチュエーター」について見ていきます。

スポーツ動作は、「アトラクター」と「フラクチュエーター」が組み合わさって構成されています

  • アトラクター:状況が変わっても変化しない要素(安定しているため、制御に必要なエネルギーを少なくできる)
  • フラクチュエーター:状況の変化に適応する要素(動作に柔軟性を持たせ、様々な状況へ対応できるようになる)

 

スポーツ動作の練習は、「アトラクター」と「フラクチュエーター」の適切な比率を学ぶことであるともいえます。

例えば、「フラクチュエーター」の数が多すぎると、動作の制御に必要な情報量が多すぎて、コントロールできません。

反対に、「フラクチュエーター」が少なすぎると、動作が対応できない状況が出てきてしまいます。

そのため、次の2つの基準を満たしている必要があります。

  • すべての動作は、できるだけ安定的(したがって経済的)でなければならない。
  • フラクチュエーターの数はできるだけ少なくしなければならないが、環境のすべての要求を満たすのに十分なものでなくてはならない。

フラン・ボッシュ:コンテクスチュアル・トレーニングー運動学習・運動制御理論に基づくトレーニングとリハビリテーション(2020)

 

アトラクター識別に関する基本的なルール

では、「アトラクター」を把握するには、どうすればいいのでしょうか?

アトラクターを識別するための基本ルールは、次のようなものです。

  • 非線形制御において、原則が一般的に応用可能なもの(例えばフルード数のように)であることが不可欠である。これは、アトラクターは特別な身体姿勢であることはめったにないということを意味する。動作のアトラクターは、相対的に動作の理論的な原則である。
  • コンテクスチュアルな変動が大きくなると、中枢神経システムが解決しなければならない問題が大きくなり、自己組織化を基本にした安定性(アトラクター)がより必要となる。
  • 中枢神経システムは相対的に速度が低い。時間的制約がある時に動作が制御されなくてはならない場合、周辺の影響の役割が高くなる。これらの影響は、アトラクターを生み出す。
  • スローイングの時の肩や肘、ランニング時のハムストリングスのような危険がある構造は、大きな負荷がかかる時には好ましいアトラクター状態でなければならない。アトラクター状態は危険がある構造を最も良く保護する。
  • 動作は、減速しなくてはならない。その時に身体は、部分的に脆弱であり、安定したアトラクター状態で好ましく減速しなくてはならない。これは、内在的な結果の知識やエンドポイント指向でうまくいく。

フラン・ボッシュ:コンテクスチュアル・トレーニングー運動学習・運動制御理論に基づくトレーニングとリハビリテーション(2020)

このリストは不完全であると述べられているので、更なる研究が必要な分野ともいえます。

このままだと少し難しいので、より詳しく見ていきます(筆者なりの解釈であることをご了承ください)。

  • 解剖学やバイオメカニクスの観点から不自然でない動作である。
  • 動作に関与する関節が増える(動作が複雑になる)ほど、アトラクター状態の必要性が高まる。
  • より短い時間で動作を制御しなければならない時ほど、自由に動かす関節を少なくする(固定する関節が増える)必要がある。
  • 怪我のリスクが高い部位は、負荷が最小限になる動作で安定させる。
  • ブレーキ動作は、身体への負担が小さくないため、一カ所に負荷が集中しないような動作を身につけ安定させることが重要。

これらのルールを意識して動作を観察していけば、動作のどの要素がアトラクターとして安定させる必要があるのかが見えてくると思います。




 

動作のアトラクターを習得する方法

ここまでは、「アトラクター」と「フラクチュエーター」について、「アトラクター」の特徴について見てきました。

では、動作のアトラクターを習得するには、どのようなトレーニングをしていく必要があるのでしょうか?

 

そのポイントとなるのが、「多様性のある練習」です。

「多様性のある練習」には、主に2種類あります。

  • ディファレンシャルラーニング:1つのセッションの中で、1つの動作に対して様々な変化を与え学習を行う方法。
  • ランダム学習:1つのセッションの中で、異なる多くの動作パターンに様々な変化を与え学習を行う方法。

「ディファレンシャルラーニング」は、動作を行う地面の種類(サーフェス)や使う道具を変化させることで、同じ動作に変化を与えるという練習法です。

意図的に動作を変化させることで、あらゆる状況でも安定しているアトラクターを見つけさせるのが目的です。

「ランダム学習」は、複数の動作を組み合わせる練習法です。

テニスでいえば、フォアハンドストローク、バックハンドストローク、ボレーと様々なショットをランダムに組み合わせたドリルという感じです。

毎回動作が変わることで、その度に動作プログラムを作り直す必要があり、神経系に負荷をかけることができます。

 

最後に

今回は、「アトラクター」と「フラクチュエーター」について見てきました。

テニスのフォーム分析をする際にも、その動きは「アトラクター」なのか「フラクチュエーター」なのかを意識すると、見方が変わってくると思います。

また、フォームを修正する際にも、「フラクチュエーター」を強制すると逆効果になる恐れがあるので、気をつけたいところですね。

 

最後に、今回の記事の参考資料をご紹介します。

  • フラン・ボッシュ:コンテクスチュアル・トレーニングー運動学習・運動制御理論に基づくトレーニングとリハビリテーション(2020)

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

ご意見ご感想ありましたら、ぜひコメントお願いします。

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